ともに汗を流してきた起業家たちとの10年【前編】

こんにちは! W ventures の服部@masahiro1985 )です。私のポリシーはNo investment, no life.(& no sauna. 笑)。昨年キャピタリストとして10周年を迎えて、11年目をスタートしています。コロナ禍で世の中の“あたりまえ”が変化を続ける日々のなかで、とくに起業家やスタートアップのみなさんにとっては厳しい選択をしなければならない場面や、むしろそれらの積み重ねによって良い結果となったという経験をされているという方も少なくないのではないでしょうか。僕自身のこれまでの10年間を振り返ったときに、今でこそ順調に事業成長を続けているスタートアップやその起業家にも知られざる苦労や絶体絶命のピンチがあって、ともにそのひとつ一つを乗り越えてきた場面が数えきれないほどあるなぁと感じています。大切なのはどんなに想定外の状況に陥っても、最後まで諦めず身近な存在である僕たちのような投資家をうまく頼って、前へ進み続けることなのではないかなとも思っています。

 

今回は、これからまさに本格的に事業・組織作りに取り組むシード期の起業家のみなさん向けに、敢えて過去に投資させていただいた起業家の方々との出会いとこれまでの歩みをたどってみたいと思います。前編では、出資させていただいた当時、シードステージかつVCラウンドで僕が最初に投資を決めたスタートアップの方々にフォーカスしました!
 

【略歴】
・2010〜2018:SMBCベンチャーキャピタル
・2018〜2019:DNX Ventures
・2020〜:W ventures
 

立場を超えて苦楽を分かち合える仲間 〜鷹取真一氏との出会い(Kyash 代表取締役CEO )

まず最初に紹介させていただきたいのが、Kyashの鷹取( @stakatori )さんです。Kyashは2020年3月に、米国を含む海外のVCラウンドを組成し、見事に約47億円を調達。累計調達額は約80億円にのぼり、日本を代表するFinTechスタートアップに成長しています。
 

鷹取さんが起業したタイミングで、僕がいちばん最初にKyashへの出資の意思決定を行ったこともあり、僕のことを“ソウルインベスター”と思ってくれています。投資実行後も、電通さんや凸版印刷さんなどを紹介させていただいてそれぞれからの投資に繋がったり、年齢が同じということもありプライベートの相談をし合ったりなど、起業家と投資家という関係性を超えて親交を深めている間柄です。(ちなみに、ここでは敢えて“鷹取さん”と呼んでいますが、普段は“しんちゃん” “まさ”と呼び合っています。笑)2015年に投資を決めた際、実は当初約束していた金額から減額承認となった結果を茅場町のプロントで伝えたところ、鷹取さんを悲しませてしまったこともありました。
 
まだプロトタイプさえもなく、スケッチブックにプロダクト構想を描きながらという段階であっても投資決定することができたのは、「長い間変わることのなかったお金の価値移動をストレスなくスムーズに届ける世界を実現したい」という鷹取さんの想いに心打たれたからでした。 銀行と米系コンサルティング勤務時代に培ったリテールバンキング・決済業界での知見を生かして、日本の金融業界を俯瞰し、人々に寄り添ったサービスの創造に商機を新たに見出す鷹取さんの姿勢とセンスが素晴らしく、今も変わらず応援しています。
 

<鷹取氏コメント>
服部さんとの出会いは、私がKyashを創業した2015年に銀行の同期から紹介してもらったのがきっかけです。当時からVC業界で活躍しているという評判を聞いていて、会ってみたら同い年ということもあり、投資家と起業家という枠を超えた友人になりました。彼は持ち前の明るさとユーモア、投資への独自の哲学で起業家からの信頼も厚く、彼が担当する投資案件は19戦19勝という言葉をすっかり信じるに至りました(笑)当時まだプロダクトもなかったこともあり、投資判断としては、市場環境と事業構造の理解が特に重要だったのですが、服部さんはKyashがチャレンジしようとしている市場や人々のニーズをものすごいスピードで理解くださり、投資決定いただきました。「起業家がその業界での経験を元に大きな挑戦をするテーマに投資のやりがいを感じる」という当時のコメントがとても印象的で、今でも尊敬しています。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、今のKyashがあるのは創業期に服部さんがいち早く投資をコミットしてくれたからだとも思っています。その後もさまざまな角度とアプローチで日本のベンチャーキャピタルのフロンティアを切り拓き続ける服部さんの姿に、とても刺激をもらっています。今後も友人として同志として応援しています。

 

洋菓子市場の変革に挑む風雲児 高橋優貴氏との出会い( 株式会社Cake.jp 代表取締役 )

続いてご紹介したいのが、初のVCラウンドで単独出資させていただいた、Cake.jpの高橋さん(@24flash )です。今となっては笑い話で良い思い出ですが、まさかの株主総会の開催忘れ!?や人件費急増に伴う資金繰り問題など、資金調達後も数々のハプニングやピンチに見舞われつつも、高橋さんの持ち前の粘り強さで、ケーキ特化のEC事業が主軸となり大きく成長。ケーキ関連商材への事業領域拡大、ケーキ関連法人向け事業、ケーキ事業への再集中、自社工場設立などのピボットを重ねて着実に企業価値を高め、2020年7月にはニッセイキャピタルなどから約2.6億円を調達。コロナ禍をきっかけに保守的だった洋菓子業界も大きく変わりつつあり、ECに参入する店舗が増えていることで今まさに大きな波に乗っています。
 

デューデリジェンス中の当時、高橋さんが運転する軽自動車で一緒に取引先である街の小さなケーキ屋さんをまわったことや、ファンドのマネジメントプレゼンテーションでの評価がイマイチでこのままだと正直ピンチ……!という投資委員会前のタイミングで、どうやったら投資の承認が得られるか、連日夜中まで喧々諤々のやりとりを重ねたり、今ではどれもいい思い出です。出資完了後も定期的にコミュニケーションをとっていて、僕の誕生日などの記念日にはCake.jpで人気のケーキを贈ってくれることもあり、自宅でも楽しませていただいています!
 

かなり保守的な洋菓子市場でいち早く事業をスタートし、洋菓子店のEC化率がなかなか上がらない市場環境にもへこたれず、地道に自ら訪問営業したり、ユーザーの方々と真摯に向き合いながら、丁寧にプロダクト開発と組織体制構築に取り組んでた、高橋さん。今では高級チョコレートで有名なゴディバをはじめとするグルーバル規模のスイーツブランドも出店するなど順調に事業成長を続けており、月次流通総額(GMV)は前年同月比300%に成長。また「ケーキ版ZOZOTOWN」とも呼ばれてメディアにも取り上げられるまでに成長中です。エンジニア出身の高橋さんはプロダクトを作るスピードはもちろん、学生時代に起業して培ってきた経営者としてのマインドの高さ、事業に真摯に向き合い続ける愚直さ、厳しいスタートアップ経営を乗り越える胆力で、必ず結果を出し切る起業家であると信じ、出資を決めてから約7年。今当時を振り返ってみても、僕の判断はぶれていなかったと思いますし、むしろ予想を超える成長を見せてくれている高橋さんにこれからも注目しています!
 

<高橋氏コメント>
創業期の僕たちは、受託開発の傍ら自己資金のみで事業開発に取り組んでいたのですが、このままのペースでは、プロダクトを通して洋菓子業界にインパクトある価値を提供することが厳しいと思い、エクイティでの資金調達を決めました。その時に知人の紹介で出会ったのが、ナイスガイ服部さんとのご縁の始まりです。当時、僕が作った資料内容に服部さんからきめ細やかで厳しいフィードバックをいただいてブラッシュアップを重ねました。なかでも印象的だったのは「“Why高橋さん?” “Why flashpark(旧社名)?”を知りたいんだ」と繰り返し熱く指摘くださったことです。また、投資委員会前の最後の上司面談が終わった際に「あとは僕の仕事なんで、任せてください」と男気メッセージをいただいて、人生初のファイナンスで先行き不安な中、少し気が楽になったことを今も覚えています。笑 資金調達後も、採用によりメンバーが増えて人間関係の問題が勃発したり、予算の使い方も変わってすごい勢いでキャッシュが減っていったり、……困った時は服部さんに相談に乗っていただいてきました。ときには厳しく、いつも愛を持ってどんな時も僕たちと向き合ってくださり感謝しています。服部銘柄Cake.jp、やりきります!!!笑

 

人生をかけてやり遂げる男 –土岐泰之氏との出会い(ユニファ 代表取締役 CEO )

土岐さんとの出会いは、2014年。ユニファ初のVCラウンドで、イチ早く意思決定し投資実行させていただきました。時価総額およそ1桁億円の時期に出資し、直近のラウンドでは約100億円規模にまで成長。僕は計3回にわたり約1.2億円を出資させていただきました。
 

最初に投資検討をさせていただいた頃は、ユニファのオフィスはまだ名古屋の小さなマンションの一室だけで、土岐さんの運転する軽自動車で保育施設などを1日かけてふたりでまわったり、名古屋駅の“世界の山ちゃん”で手羽先を食べたり……と、さまざまな思い出をついこないだの出来事のように感じています。また、投資後にもベンチャーならではのさまざまなが課題が発生し、連日深夜まで一緒に対策を考えて乗り越えたこともありました。今でも新オフィスを訪問したり、保育園を紹介したり、スタートアップ企業を紹介し合ったり、カンファレンスに登壇したり。プライベートではサウナに一緒に通って、ときには夜遅くまでお酒を酌み交わし家庭内コミュニケーションのアドバイスをし合う仲でもあり(笑) 日々、絆を深めています。
 
僕が投資を決めた理由は、保育や子育ての現場にかける想いが愛に溢れていて、社会・事業・組織への責任感がとても強い、という土岐さんの起業家としての情熱的な生き方を応援したいと考えたからです。「プロダクトファウンダーフィット」という言葉を耳にする機会が増えていますが、土岐さんとユニファ社はまさにそれに当てはまると感じています。保育業界における課題は多岐に渡ります。創業当時から土岐さんが保育士や園長先生、業界のキーマンといった方々の懐に飛び込み、彼らとの信頼関係を築いていく様子を間近で見させていただいて、「この業界を変革するのはこの人しかいない」「ぜひ応援していきたい」と心から感じてきました。土岐さんは今も「人生をかけてこの事業をやり遂げます」と日常的によく言葉にされるのですが、そうした起業家としての覚悟や迫力を出会った当時から感じていました。
 

<土岐氏コメント>
投資家には大きく分けて理論派と本能派の2つのタイプがあると思うのですが、服部さんはまちがいなく本能派の投資家で、出会ったころから今も変わることのない魅力の持ち主です。どんな場面においても、愛を持って厳しく本質的な指摘をしてくれるので心から信頼していますし、起業家と投資家という立場を超えて、人と人として心を許して向き合うことができる貴重な存在です。ちなみに、僕がサウナに一緒に行くのは服部さんだけです(笑)。これからもぜひ末永く、仕事における“家族”としてよろしくお願いします!

 

“ソーシャルベンチャー”の第一人者 〜 大石英司氏との出会い(みんな電力 代表取締役)

みんな電力の大石さん(@oishi_enetomo)との出会いは、2011年。初めての出会いから2年ほど定期的に面談を重ね、2013年に時価総額1億円のタイミングで、みんな電力として初のVCラウンドで出資させていただきました。リードとして計3回に渡って約1.5億円を出資。今では時価総額約100億円規模に到達し、IPOを視野に入れて成長を続けています。
 

投資直後取引先に売上を持ち逃げされたり、家の権利証を持ち出しお金を工面したり、1日数百円で生活する日々が続いたり……出会ってからこれまで、想像つかないほどの険しい山や谷をいくつも乗り越える大石さんの姿を投資家という立場から間近で目の当たりにしてきました。資金調達においても、何度も投資家や銀行を回って断られるなど、厳しい局面も多くありましたが、その都度一緒に考えて最善の選択を尽くしてくることができました。
 

大石さんの素晴らしいところは、少し先の未来を見据えた独自の発想を具体化させ、周囲からすぐに賛同を得られなくてもピュアに自分の夢を信じ続ける心を持ち続け、チームを巻き込みハブのような存在となって前に進めるリーダーシップ力を発揮している点です。ようやく時代が追いついてきたというところもある今、大型資金調達にも成功してSDGs領域に取り組む代表的なスタートアップとして、広く多くのみなさんから認知いただけるまでに成長しました。サステナブル時代を代表する「ソーシャルエネルギーカンパニー」として、さらなる事業成長を期待しています!
 

<大石氏コメント>
服部さんは僕にとって、利害を超えて心の距離が近い存在です。みんな電力はいわゆる「ソーシャルベンチャー」で、その事業領域の特性上どうしても既得権益に触れていかねばならない場面があるのですが、そうした時に定性的な想いを理解いただいてともに共有できる投資家の存在が必要だと感じています。今でこそ「SDGs」という言葉とともに社会からの理解も得られるようにはなってきましたが、自然エネルギーにおける顔の見える価値化を8年前の当時から一緒に考えてその実現を信じ、中長期目線での挑戦を応援くださってきた服部さんにはとても感謝しています。いつか『HATTORI情熱キャピタル』を設立しましょう!独立するときは必ず力になりますよ!!(笑)
 

最後に

ご協力いただいた投資先企業のみなさまありがとうございました。僕自身の考え方として「投資家はトラックレコードを出してなんぼ」という信条のようなものがあったので、これまで投資活動に関する積極的な発信をあまり行ってきませんでした。しかし、気がつけばVCという立場での仕事に携わりあっというまに10年の節目を迎えて、これまでのことをまとめることで起業家のみなさんと一緒に振り返ることができるのではないかなと考え、noteでの記事化を試みるに至りました。そして、記事の制作・公開にあたって、企画・編集面でPRパートナーの田山慶子さん(@KeicoTayama)にご協力いただきました。この場をお借りして、みなさまに深くお礼を述べさせていただきます。
 

おかげさまで、これまで素晴らしい起業家のみなさんと巡り会い、ご縁を繋いでくることができました。今でこそ笑って話せるエピソードが思いのほか多くあることや、一方で日々の厳しいスタートアップ経営の中でVCとしてどんなスタンスで起業家と向き合ってきたのか、改めて自分と向き合い、振り返る良い機会にもなりました。この記事が何らかの形で、いつかどこかで今まさにシード期を走る起業家のお役に立つことができたら嬉しいです。
 

今回取り上げさせていただいたのは投資先のなかでもほんの一部のみなさまなので、「おいおい服部!俺は?」という方や「我こそは…!」という方がいらっしゃいましたら、ぜひ今後ご紹介させてください!PVが伸びたら調子に乗って?シリーズ化も検討します。笑
 

前編ではシード期から支援させていただいた起業家の方々にフォーカスしましたが、後編ではEXITを果たしたGoodpatch土屋さんや元ザワットCEO(現メルカリDirector)原田さん、またtoBからtoCへ事業領域を広げてさらなるスケールを狙うTableCheck谷口さん、そして、W venturesに入ってからの投資先であるガレージバンク山本さんに登場いただきたいと思っています。お楽しみに……!

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